スイス・クライネシャイデック~ヴェンゲン(アルプスハイキング)

2015/08/15 (5日目) 続き

視界の悪い雨の中、現在地も方角もわからず山の中を歩き続け、ハイキングを始めてから2時間以上が経過していました。道に迷って歩く時間というのは何倍にも感じます。列車の時間のあるうちにどこかの駅に辿り着かなくてはなりません。でなければ、雨をしのぐ軒下とか大木すらもないので命にかかわります。

クライネシャイデックへの道に入ってからというもの、生き物に遭遇することがなかったのですが、視界が開け、久しぶりの牛に遭遇しました。建物がいくつか見えるけど知った景色ではなく、困ったことにこの先で道がいくつかに分かれているようです。

クライネシャイデックから下ったあたりにある分かれ道の近く


牛の先にあった建物は牛舎で、ちょうど牛を牛舎に入れているお爺さんがいました。助かったと思い、簡単な英語で道に迷った、クライネシャイデックへ行きたい、どっちへ行けばいいか、そう訪ねます。が、やはりドイツ語しか話さないようです。クライネシャイデックを連呼すると、どうやら、次の所を右と言っているようでした。

私の感覚でも右で正しいと思ったのですが、いざ来てみるとかなりの上り坂で、とても不安になり、行くべきか悩みます。今一番困るのは、周辺の山とか尾根に上がってしまうことなのです。母の体力を考えるとこの賭けは最後と考えなければいけません。周辺の建物全てに誰かいないか、ドアなど叩いて周りますが人がいる気配はありません・・・。

迷いながらも道を上がると、前方からまた別のお爺さんが来ました。藁にもすがる思いでもう一度聞くと、この道を30分上った所がクライネシャイデックと教えてくれました。いや、まてよ、自分の都合のいいように聞こえたかも知れない、half an hourの前にone andとか言わなかったか?そう思い、30分歩いたらクライネシャイデック?と確認すると、そう、きつい登りだけどね、と答えてくれました。

「この道であっているって、後30分だって言ってる。頑張ろう。」精神的には救われたという気持ちで坂を登ります。ただ、お爺さんが言っていた通り、疲れた体には辛い長い長い坂道でした。道はあっていると信じ、一歩でもゴールに近付くことだけを考えて進みます。斜度がきついので母はもう真っ直ぐ登れず、ジグザグにゆっくり歩いてついて来ます。

私は瞬発力とか短距離は自信がありますが、体力持久力そして忍耐力はありません。トレッキングポールを持っていて本当に良かったと思いながらも、自分の体重をうらめしく思いながら終わりのないように思える坂を上がり続けます。泣きそうになりながらも、何度も励ましの声をかけることで自分自身をも励まし、気力を振り絞って進みます。もうカメラも時計も見る余裕はありません。

さらに先で牛を追って下りてくる人と車に出会います。それぞれに、しつこくクライネシャイデックこっちでいいかと聞きます。最後の人は、後10分と言ってくれました。するとすぐに、見覚えのある景色が見えました。間違いなくクライネシャイデックです。助かった、やっとほっとしました。

クライネシャイデック


母にはゆっくり来てと言って先に駅へ向かいます。17:30、とうとうクライネシャイデックの駅に辿り着きました。一度だけあった時間入りの標識クライネシャイデック1時間20分の所からまさに1時間20分で着いたのは驚異的です。素人が迷いながら歩いたにしては本当に頑張ったのだと思います。早く山から抜けたい一心で休憩も取らなかったからでしょう。

持っていた時刻表はぐっしょり濡れ、まるでポケットに入れたまま洗濯したノートみたいな物体になっていました。そこで駅の時刻表を見ると何と、まさに出発しそうな列車がそこにいます。あわてて、母に「急いで~」と叫びますがどうやら無理そうです。

最後の坂道を必至に登る母


目の前で列車に行かれてしまい、次の列車の時刻を確認すると、次は18:31です。1時間・・・。駅周辺にも人はいず、レストランやお土産屋も閉まっていて休む場所もありません。びしょ濡れで、休んだら風邪ひきそうです。

クライネシャイデックの駅


ここからヴェンゲンまでは歩いて帰った事がある、途中に駅が2つあるから、ここで1時間待つよりは、1駅か2駅分歩こうかと提案します。この道は一度歩いているから迷う事はないし、全部下りだと言うと、母もむしろ体を動かしていないと辛そうだと賛成してくれました。という事で、再び歩き出しました。3時間山を彷徨った後、まだ歩くことになるとは考えもしませんでした。

ヴェンゲンへのハイキングコース


本来であれば、ユングフラウを左手に見ながら風景を楽しんで歩けるコースですが今日は真っ白です。それでもうっすらと氷河の先が見えたりしました。ここに、どん、とある山を見せてあげられないのは私のせいではないのに、物凄く申し訳ない気分です。

クライネシャイデック付近から見たユングフラウ


散々辛い上り坂を登った後だったせいか、下りの道は歩くのが意外にも楽でした。というかむしろ立ち止まるのもキツイほど機械的に重力にひっぱられるように足が動きます。持っているお菓子などを食べエネルギー補給をしながらひたすら下ります。1つ目の駅は30分でついてしまったので、このまま次の駅を目指すことにします。

クライネシャイデックからヴェンゲンまでのハイキングコースの道


このコースは線路の近くに作られていて、途中からはヴェンゲンの村が見える所もあります。ゴールが視認できるというのは、こうも違うものでしょうか。母にとってはどこも初めての知らない道ですが、どこを歩いているかわからなかった時と比べると安心感があるようです。

ハイキングコース途中から見えるヴェンゲンの村


1つ目の駅を通過した時から、余裕のでてきた私はある事に気付きました。18:31の列車は次の駅までに追い越されてしまうかも知れない、でも待てよ、計算するとその列車はオプショナルツアーでユングフラウに行ったツアーの人達が乗っているんじゃないか?という事です。見るも無残な状態で列車に乗り込んだりしたら今日の出来事を説明しなくてはなりません。いっそこのままヴェンゲンまで歩こうか、そんな事を考えながら歩いていました。

この辺りの景色はこんな天気でもとても幻想的で素敵です。母は完全に自分のペースをつかんだようで、たまに写真を撮るようになった私はむしろ置いて行かれるようになりました。

ヴェンゲンあmでのハイキングコースの景色


たまに線路の脇も通り、木々が多くなって少々暗い道もあります。母は日没で暗くなることを心配していたようですが、8月のスイス、まだ明るいので大丈夫です。あの山の中で暗くなったら道もわからずアウトですけどね・・・。

線路沿いも通るハイキングコース


休憩もせず黙々と歩き続けると、列車より早く2つ目の駅にもついてしまいました。列車を待って1駅だけ乗ってもいいですが、その列車その駅を停まるのか?という疑問と、同じツアーの人たちが乗っている可能性が高いという事もあり、後1駅だから歩いちゃおうか、と最後まで歩くことを選びました。それでもどこかで列車に抜かれて車窓で見られる可能性はあります・・・。ヴェンゲンの村は確実に近付いてきています。

近付くヴェンゲンの村


ついにヴェンゲンの村の端まで来ました。生還した、という実感が沸きます。ここまで来たらもし倒れても民家に助けを求める事だってできます。

ヴェンゲンの村のはじ


19:10 列車に乗った場合と変わらない時間でヴェンゲンまで戻ってきました。
前回ダンナと歩いた時は2時間近くかかったったこのコースを散々彷徨い歩いた後の疲れ切った体で1時間半ほどで歩いてきてしまったのです。恐るべき精神力です。

ヴェンゲン駅


そのままホテルへ帰ります。もう1歩も歩きたくありません。全身ずぶ濡れ、すぐにシャワーを浴びます。Tシャツに山用シャツ、ウィンドブレーカーの上からポンチョを着ていましたが、汗でサウナ状態、襟元から入った雨とでジーンズの色が下着に写るほどです。靴がそこそこ防水だったのは幸いでした。どんなコースだろうと雨の日にはそれなりの装備がいると実感です。

部屋で日本から持参したカップ麺と、ハイキングに出る前に買っておいたブドウを食べます。カップ麺の出汁の効いた暖かいスープが身に沁みました。
3万5千歩超、シップを貼るものの、足はガタガタです。

それにしても、母を連れて行った事は間違いでした。頑張って4時間半、上り下りを歩き通したとはいえ、転んだりくじいたりしても危ない所でした。母はそこそこ歳なので、戻ってきてからは、ぼーっとして、食べながら意識飛んでたり、意味不明の事を口走り、やばい感じです。もうこんな危険は冒せないと思いました。

2015/08/16 (6日目)

朝、母が死んでいたらどうしようと本気でドキドキしながら起床します。
一晩寝たら、少々復活した模様で安心しました。それより私はひどい筋肉痛でろくに歩けない状態です。

朝食を食べながら、本当に無事に戻って来れて良かったと安心しました。
よくよくハイキングマップを確認すると、やはりメンリッヒェンで最初に歩き出した道がそもそも間違っていた事を確認します。グリンデルワルトからのロープウェイ駅まで行かなくてはその裏から出ている道に気付かなかったのです。いつか再チャレンジしたいと思います。

ホテルの朝食


オプショナルツアーでユングフラウ観光に行った人から話を聞くと、やはり山は全く見えずホワイトアウト状態、途中駅からのグリンデルワルト方面の景色も何も見えなかったそうです。そればかりか、アイスパレスで転倒した人がいてひと騒動、フリータイムもほとんど取れず、外にも出れなかった、と散々だったようです。山で遭難体験よりはマシだとは思いますけどね・・・。

7:45 ホテルを出発します。霧雨で、やはり山は見えません。今回、マッターホルンとユングフラウ三山、どちらも見れなかったのはとても残念です。
8:03の列車でラウターブルンネンへ向かいます。

列車から見るラウターブルンネン


8:20ラウターブルンネン着。ここからバスに乗り換えてユングフラウ地方を後にします。
もう山から離れるのに、あまりに筋肉痛がひどいので、今日はトレッキングポールを1本持ち歩くことにしました。今回の旅は忘れられない旅になりました。教訓、天気が悪い日にはきっぱり山の観光は諦めましょう。

ラウターブルンネン


次回はマイナウ島をレポートします♪

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あー、よかった

 無事 帰っているのに すごく 心配しました。
 大変な行程でしたね。わたしも、
 お天気が悪い時は 気を付けます。

Re: あー、よかった

やれやれでした・・・。
母には最初で最後のスイスかもと思って、ちょっと無理なお出かけをしてしまいました。
どうも欲張っていけません。
軽く裏山を散歩くらいの気持ちだったのに、甘かったです。
何が起こるかわからないものですね・・・気をつけましょう!

No title

いつもと違うハラハラドキドキでした。
無事で良かったですけど、ネットを使い倒している感じのayaさんがGPS付のGoogle Mapを使われていないのかと思うと、ちょっと意外でした。

私の場合、2012年からAndroidのタブレットを持ち歩くようになって、ホテルのWiFiで翌日の行動範囲をGoogle Map(旧:Navi)やMy Trackに覚え込ませ(単に一度ルート確認を兼ねて表示させているだけです)、
歩くときはMy Trackの記録をONにして(そうすれば、GPSが常時稼働してくれるため)、持ち歩いています。
現地でのネット契約は不要で、ホテルの無料WiFiだけで十分。

このおかげで、レンタカーだけでなく町歩きや鉄道・バスでの移動でも怖いもの知らずになりました。
自分がどこにいるのか確認できますし、バスや列車を降りるタイミングも分かります。
なにより地図があるので、間違ったルートに入り込んだ時のリカバリーも簡単です。

まだ試されていないのであれば、ぜひ試してください。

Re: No title

IT出身の私ですが、いや、だからこそかな?
スマホもタブレットも持っていないのです。タッチパネルも嫌いだし、
スペック的にもやっぱりPCじゃないと・・・。

しかもこの時は荷物を最小限にしてるので、鞄すら持ってなかった!
エコバックみたいな簡易リュックに最低限の貴重品とお菓子と水、時刻表だけ。
ポケットに防水カメラと防水携帯。

でもこんな事があると、ちょっと考えさせられますね。
おもちゃとバカにはできないですもんね。でも手荷物が増えちゃう?

No title

ドキドキしながら読ませていただきました。
お母様も頑張られましたね。
自然の中での迷子は体力的にも精神的にもきついですよね。
旅先でこんなこともあるのかと驚きました。

Re: No title

クライネシャイデックとかメンリッヒェンて、人気の観光スポットですから、天気のいい日は
それこそたくさんの観光客がいてる時期なんですよ~。なのに、天気のせいもあってか
無人状態。
本当にこんな事があるのかと驚きました・・・

No title

こんにちは!

牛が二匹とも
ayaさんに振り返って挨拶してるよ(笑)

No title

私もPC歴35年の強者で現役プログラマー兼SEですけど、スマホは持っていませんし、タッチパネルも大嫌い。ノートPCではパッドも使わず、常にマウスとキーボードのショートカット駆使派です。

タブレットは、旅行の時のガイドブック代わりです。
本のガイドブックは必要部分だけスキャンしてタブレットに放り込めば、荷物は増えないのでは?

Re: No title

tookueさんm」こんにちは!

牛さんに道聞くも、教えてくれませんでしたよ~
お願い、道あけてー、は分かったみたい?

Re: No title

Rさん

でもPC手放せなかったら、電子機器増えるだけだし~
元々、ガイドブックは本を持ち歩いてはいないんで、ただでさえ多い手荷物が増えちゃう(笑)
カメラはどうしても2台持ちしたいし。

スマホがもっとPC並のスペックになってくれたら持とうと思ってたんですけど、スマホもタブレットも
そしてPCもここ数年ほとんどスペック変わらずで二の足踏んでます。
前も旅行用にと買いに行ってタブレットも見たんだけど、結局ノートPC買って帰っちゃった。

そういえば車にも頑固にナビつけなかったしなー、単に余暇でまでコンピュータに頼りたく
ないだけなのかも知れません(笑)

No title

こんばんは!

いつも楽しみにブログを拝見させてもらってます。m(__)m
しかし今回のトレッキングの記事はとてもハラハラドキドキさせられました~💦 自分も山登りをするので同じ様な経験をしたことがあります!その時は涙がこぼれそうなほど不安になりました。 こういった場面にぶち当たった時いかに冷静になれるかが一番重要になりますよね! 
でも結果無事に麓に下りてこられたので良かったですね。
お母さんも無事で安心しました!

また次回からの旅を楽しみにしてますねぇ。 

Re: No title

こんばんは!コメントありがとうございます♪

本当に涙目でした・・・。
私の父は高尾山健康登山100回満行という健脚なんですが、私も母も普段は
散歩しかしない人なんですよね。
スイスまで来たんだし、って思ったのが間違いでした。
そう、一生懸命冷静になろうとしましたよ・・・そもそも行ったのが間違いでしたが
早めに戻る勇気が必要でした。
もうちょっとだけ、そう思って進んで戻れなくなってしまったんですよね。
本当に無事で良かったですが、以後はよーく気をつけます!

No title

無事に帰って来られてよかった^^
お母様も頑張られて、読んでいて
ドキドキしました。

Re: No title

最後の30分の登りはかなり辛かったです~
あのコースは天気のいい時にもう一度、とは思わないですね~(笑)
ちょっとは緊迫感が伝わったようで、よかったです!
プロフィール

aya1103

Author:aya1103
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