スイス・メンリッヒェン~クライネシャイデック(アルプスハイキング)でまさかの遭難

2015/08/15 (5日目) 続き

小雨降る中、午後のフリータイムはメンリッヒェンからクライネシャイデックまでハイキングすると決めた私たちは、ホテルへ戻り装備を整えます。このコースは初心者コースで1時間20分のほぼ平坦、なだらかな下りで、スニーカーでも歩けるコースです。荷物は最小限にし、帰りの列車の時刻表と飲物、ちょっとしたおやつだけ。ポンチョを着て、トレッキングポールも一応持っていきます。

先ほど調べておいた14:30のロープウェイでヴェンゲンからメンリッヒェンへと上がります。片道は一人22フラン。帰りはクライネシャイデックから列車でヴェンゲンへ戻る予定です。

メンリッヒェン行ロープウェイ乗り場(ヴェンゲン)


ロープウェイ乗り場から見るとメンリッヒェンの展望台は見えるか見えないか、ギリギリです。もちろん晴れている時はくっきり見えます。

ヴェンゲンのロープウェイ乗り場から見たメンリッヒェン


14:30 結局、ロープウェイは2人で貸切でした。この天気じゃなければ人気の展望台なのですが、ユングフラウ三山も見えない中、わざわざ展望台へ上る人もいないという訳です。
展望台までは5分、あっという間にヴェンゲンの村が小さくなっていきます。

メンリッヒェン行ロープウェイから見たヴェンゲンの村


頂上に着くと、いきなり牛のお出迎えです。牛避けなのでしょう、柵で囲まれていて、人間が外へ出れません。どこから出るのか迷っていると、ロープウェイの運転係が煙草をくわえながら黙って開けてくれました。他に人の気配は全くありません・・・。

メンリッヒェン頂上駅の周りは牛だらけ


さてと、クライネシャイデックへ行く道はどれかな、と思いきや、視界が悪く、近くしか見えません。道は1本しか見当たらなく、いろいろな行先が全てそこに書いてあります。後で分岐するのかもしれません。右前方にはぼんやりと小屋みたいのが見えますが、おそらくグリンデルワルトからのロープウェイ駅でしょう、ちょっと上りになるし行ってみようとも思いませんでした(行ってみるべきでした)。

視界の悪いメンリッヒェンと牛たち


何の疑いもなく、道を歩き始めました。道を確認しようにも人もいないし、案内版も見当たらなかったのです。晴れていればアイガーを目指して歩けばいいので、迷うことはあり得ないし、人も大勢歩いているはずです。前回、クライネシャイデック側からこのコースは半分歩いているし、重いからとガイドブックやハイキングガイドまで置いてきてしまいました。思えば、これが悪夢の始まりでした・・・。

メンリッヒェンから下る道


しばらく車も通れる舗装道路を下って行きましたが、徒歩用の道があるのがわかったので、そちらを歩き始めます。目指す方角は右手のはずだし、やけに下っているので、変だな、とは思いました。でも、右手に行く道はないし、右手の山にも道らしきものが見当たらないので、あの池みたいな所まで行ってみたら何か案内とかあるかも、と最初の確認地点に決めました。

メンリッヒェンの下にある池


しかし、池まで来ても牛の水飲み場のようなものがあるだけで、何の表示も地図もありません。
おかしいな、他に道なかったよねここまで?と言いながら更に先へと進みます。段々、ハイキングコースらしい道になってきますが、相変わらず人影はなく、出会うのは牛ばかりです。

ハイキングコースは牛がとうせんぼ


さらに悪いことに雨が強くなってきました。でも、足元はぐちゃぐちゃではないのが救いです。
頭上にずっとロープウェイがあるのがやっぱりおかしいと思い始めます。どこかで間違ったとか分岐があったとかないし、かなり下っているので、もう戻りたくありません。すると前方に建物が見えてきたので、そこまで行くことにしました。

やっとの事で建物まで辿り着きましたが、そこは冬季のリフト乗り場なのか、周囲の小屋なども含めドアを叩きまくりましたが、人は誰もいません。トイレの鍵は開いていたので利用させてもらい、唯一持っていた資料、鉄道の時刻表の大まかな地図なども見ますが、あまり役に立ちません。

地図にはない冬季のリフトとかいっぱいある


このまま行くとグリンデルワルトからのロープウェイの中間駅に出ると思われる位置にいることだけはわかります。最悪、その駅に出ればロープウェイでメンリッヒェンへ戻れると、先へ進むことにしました。

すると、途中で下から上がってきた男女と出会います。初めての人との遭遇です。英語で話しかけますが、それほど高齢者でもないように見えたのですがドイツ語しか話しません。分かったことは、彼らはグリンデルワルトから来て、メンリッヒェンへ向かっているという事だけでした。
想定した通り、グリンデルワルトへ下る道を歩いていた事がわかったのです。それも気付けばもう1時間くらい、下りてしまいました。正しい道なら既に歩いた事のある場所に到達できる時間です。

そのすぐ後に、初めてハイキングの標識に出会いました。ロープウェイの中間駅までは20分、グリンデルワルトグルントまでは1時間50分、メンリッヒェンへ戻るには1時間15分とあります。
母は下りてきた坂を登るのは嫌だと言います。私も嫌です。今なら中間駅から出ているロープウェイに乗れれば、メンリッヒェンからヴェンゲンへの下りのロープウェイもあるはずです。

ハイキングの標識


20分下ろうと思って歩き始めると、その中間駅が見えてきました。その時です。次の標識にクライネシャイデックの文字があったのです。車道の道を少し戻ると、分岐がありました。方向も合ってるし、所要時間は書いてないけど、ちょっと行ってみようという事にしたのです。これが第二の間違いでした・・・。この時点で歩き始めてから1時間10分経っていました。

Holensteimからクライネシャイデックへ向かう道


軽く水分補給して、クライネシャイデックへの道を歩き始め、もうちょっともうちょっとと進んで、不安になった頃、視界が開け、次の道しるべが確認できました。クライネシャイデック1時間20分と書いてあります。ここから1時間20分?と愕然とします。当初の予定通りであればメンリッヒェンから1時間20分でクライネシャイデックに着くはずだったのですから無理もありません。予定していたのとは違うルートを歩いている事だけはもう確かです。

山の中のハイキング標識


それでももう引き返せないので進むしかありません。道と時間がわかっただけでも精神的には楽になりました。所が少し行くとなんと道が無くなってしまいました。
斜め右を見ると上の方に小さな小屋があり、そこへの急な斜面には何のためかわからないテープが張ってあります。何かのコースなのは確かなので、道ではありませんが、小屋まで上がってみるしかありません。水が流れる足場の悪い急斜面を泣きそうになりながら登りました。

水の流れる斜面


山の中ではいくつかの小屋を見ましたが、どれもこれも鍵がかかっていて、人はいず、冬季などに使われるものらしい事はわかりました。斜面を何とか上がるとその小屋の前には道がありました。不安に駆られる中、道を進みますが、かなり山を登っているので段々不安になってきます。すると、視界の悪い中、私にはアイガー北壁ぽいものが見えました。

「アイガーだよ。方向は絶対あってる。」私は嬉しい声をあげます。でも、母には見えないと言います。まさか幻影を見てるのか?これはやっぱり遭難してるという事なのか?「大丈夫、位置はだいたいわかっているし、どっかの山に登らない限り、クライネシャイデックじゃなくても周辺の駅か線路に辿り着く。だいたい普段なら人がいっぱいハイキングしてる所だし、ここで遭難するなんて高尾山で遭難するようなものだよ!」と母を励まします。

高尾山は私が1歳にも満たない頃から子ども時代には数えきれないくらい登った山で、私の父は今でも毎日のように登っています。なのに母は「忘れたの?昔高尾山で道間違えて変な里みたいな所に下りちゃったじゃない。今も毎年遭難する人いるのよ。」と返してきました。「子どもの頃の話?覚えてないよ。だいたい今そんな高尾山で遭難した事あるとか言う?ここは励まし合う所だよ。」

そうは言ったものの、行けども行けども新たな上り坂が出てくる道には、疲労と焦りが募らざるを得ません。私はともかく母の体力が持つかが心配です。救援呼んだら保険でカバーできるだろうかとか、そもそも携帯の電波は入るのだろうかとか、最悪の事を考え始めました。結果が怖いし、無駄な動作をしたくないので、携帯の電波は確認しませんでした。

クライネシャイデックへの坂道


曲がりくねった道を歩く事によって方向を見失っていないか私は少し不安になりますが、母は土地勘がゼロなのでもっと不安に違いありません。それにただでさえ視界が悪く、雨も降っていて、ちゃんとした装備もないので、日没で暗くなったら避難する場所すらない山の中、想像を絶する気分だったと思います。滅多に母に謝ったりしない私ですが、「ごめん、こんな事になって。自分のペースでいいから無理せず頑張って。」そう言いながら自分は気持ちを強く持とうと努めます。

うっすら見える鉄道とアイガー


次の標識が見えました。時間は書いてありません。クライネシャイデック、メンリッヒェン、グリンデルワルト方面、全方向に白に赤線があります。中・上級ハイカー向けコースであることを示しています。トレッキングポールが無ければ私達のようなど素人で軽装の人には歩けないコースです。最初に下った分、登らなければならないのは考えてみれば仕方ない事ですが、どうしてこんな山登りをする羽目になったのか、やりきれないのと同時に切羽詰まった気持ちになりました。

白に赤線は中上級ハイカー向けコースの標識


(今回の写真は標識の写真が多いですが、写真を撮る余裕がなかったためです。標識の写真はその標識と通過時間を記録するために撮ったものです。)

次回、このハイキングの続きをレポートします♪

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No title

ayaさん
お久しぶりです。
あ~~~心配!!
昔スイスでちいさな子供2人(一人は歩けないので、背負って)連れて電車で上がり、ちょと次の駅までと思ったら、5時間かかりました。
足の親指から血が出ていました。
大変でしたね。本当に気持ちわかります。
その前にも実は遭難しかけたことがあるので、、、、

Re: No title

こんにちは!

山は例え簡単なコースだろうと慣れたコースだろうと、甘く見ず、しっかり準備しなくてはいけない!
わかってはいるんですけど、いざとなると、引き返す勇気とかなかなか持てないものです・・・。
雨降って、視界悪いのに、それほど山耒じゃないのに無理したのが問題でした。
どこにいるかわからない、ものすごい不安。こうした危機を体験する度にいろいろ教訓を得ている
はずなのに、どうして繰り返してしまうんでしょう。それも母まで巻き込むなんてね。
こういう時の5時間って、5日間くらいに感じますよね!!
ともかくお互い今無事で良かったです・・・。次はないようにしましょうね~

No title

こんにちは!

暴れ馬・じゃじゃ馬とかよく聞きますが(笑)

暴れ牛はあまりききませんよね
でも
牛って 怒るとかなりヤバイみたいですよ

Re: No title

こんにちは!

スイスの山にいる牛ってカウベルのせいかのんびり屋さんに見えます。
変に怖がったり逃げたりしたら、追いかけてくるのかなぁ・・・。
牛さんかまっている余裕はなかったですけどね。

No title

こんにちは

結果ご無事なのはわかっているのに
ハラハラドキドキ
次回を楽しみにしております

Re: No title

こんにちは!

いや、ほんとに、無事に帰ってブログとか書けるのか?って頭よぎりましたよ。
もし救援呼ぶようなことになったら、逆にブログには書けないなって。
後から振り返れば、何がどうなってこうなったかとか、どの辺を歩いたかとか
わかりますが、その場では何も情報がなく、山の中さまよっている気分でしたからね・・・。
今一つ、そのあたりの臨場感を持って書けないのが残念ですが、ちょっとは伝わったようですかね。
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aya1103

Author:aya1103
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